MLBでの菊池雄星投手の松ヤニ使用問題に想ふ。
TV中継にもハッキリ映っていたということで言い逃れは出来そうにないが…。
昨日、日本時間の9日に行われたヤンキース戦において、7回途中3安打1失点という好投をみせたマリナーズの菊池雄星投手がMLB2勝目をあげました。
おめでたい話ではあるのですが、現地のTV中継では防止に球の滑り防止用の松ヤニを付けていることを指摘され、敵将のブーン監督も試合後の談話でそのことに触れたようです。
今から5年前には、当のヤンキース所属だったピネダ投手の松ヤニ問題が波紋を呼び、10日間の出場停止という厳しい処分を受けたこともMLBファンの記憶に新しい所です。
そんなヤンキースですが、今のところ菊池投手の件に関して大きく問題提起をする動きはなさそうです。
ヤンキースのベンチ内でも菊池投手の松ヤニは話題になっていたようなのに何故なのでしょう。
MLBは暗黙の了解だらけ。
米国はご存知の通り歴史の浅い国です。
ですが、実際には近代国家としての歴史は長く、現代社会生活を営むにあたっての風習などは古かったりします。
そうした伝統に対しては極めて保守的な面もあります。
変革をした方が合理的であるのに伝統にこだわる。
銃規制などの社会的な分野だけでなく、スポーツの世界にも及びます。
特に、古き良き米国の伝統的スポーツである野球にはそういった面が多いように思われます。
それがMLBの世界に多く存在する暗黙の了解になるのであろうと考えます。
今回の件もそうです。
MLBにおいても、ロジンバッグを除く、松ヤニ等の使用は禁止されています。
禁止される最大の理由は、油脂などを指先に塗ることで大きな変化をする魔球を投げるという違反投球を防ぐためです。
現代人には馴染がありませんが、昔は多くの投手がこのような魔球を投げたのだそうです。
これを防ぐために指先に何かを塗るのを禁止するというルールは極めて合理的です。
ですが、菊池投手もその他のMLB投手たちも、決して魔球を投げるために松ヤニを使用しているわけではありません。
野球好きなら誰もが知っている、よく滑る米国の公式球の滑り止めとして使っているのです。
滑ることで悪名高いボールをすっぽ抜けせずにコントロールするために松ヤニ等を使う。
打者の立場でも死球で怪我をするリスクが減らせるのでメリットがあります。
だけれども、ルールで禁止されている。
スピッドボール(魔球)は禁止だけれども、つるつるのボールでは試合にならないから、目立たないようにこっそりと滑り止めを利用してくださいってことなんですね。
これがMLBに多くある暗黙の了解の一つなわけですね。
で、今回、かつてピネダ投手が重い罰を受けた記憶も新しいヤンキースが抗議の姿勢を見せないのはなぜか。
これは多分、多くの日本人投手と接してきた経験から来ているのではないでしょうか。
日本のボールは滑らない。松ヤニなどの対策は要らない。
米国に来たばかりで不慣れなキクチに厳しく暗黙の了解を適用するのはかわいそうだ。今後は目立たぬようにうまいことやれるようになってくれ。
こんな感じなのではないでしょうか。
本当は伝統なんか捨て去って、滑らないボールに変更するだけで滑り止め対策が不要になるだけでなく、昨今問題が大きくなっている投手の健康問題にも大きく寄与するはずなのですが。
だけど、日本も昔ながらの多くの伝統を守りながら現在を生きている国ですから、向こうからするとお前が言うな状態なのかもしれません。