進撃の巨人 113話 暴悪 を読んで想ふ。
ジークには使命があったそうです。
怒涛の展開ながら、アクションシーンが多かったせいもあってあっという間に読み切ってしまった第113話。
あっという間に読み切っての最後のシーン。
「将来は野球選手になるか?」
「…ダメだよ。クサヴァーさん。僕には…使命が…あるから。」
幼いころから野球が大好きだったと感じられるジークにとって、夢であったろう野球選手を使命感で簡単に諦めてしまえる。
もっとも夢見がちな年齢を、現実的で過酷な使命感に支配されていた幼少期のジーク。
使命という字は、命を使われると書きます。
使命を自分の意志で自身に与える場合もありますが、多くの場合は情勢などによって与えられるもの。自己犠牲で命を捧げ使われるものという印象が個人的にはあります。
当時7歳前後と思われるジークが自分の意志で強い使命感を持つなどと考えにくいことです。
誰かが幼いジークに使命を与え、過酷な人生を送らせたと考えるのが自然です。
そして、ジークに与えられた使命は、他人に語るのが憚られるもののはずです。
それをあっさりとしゃべってしまえるクサヴァーさんは、その使命の内容を知っていると考えるのが自然でしょう。
このクサヴァーさん。名前は初出ですが、顔は何度も出ていました。
現在のジークのものと思われる眼鏡をかけ、ジークと深い縁がありそうに如何にも意味ありげに登場していました。
今回、この人物でわかったことは名前と腕章です。
クサヴァーという名前と、選ばれしマーレの戦士の腕章。
すなわち、過去に巨人能力を有するマーレの戦士であり、現在は後継者に食べられて既にこの世にいない人物だということが推察されます。
彼のものと思われる眼鏡を受け継いで大事に使用していることを考えると、獣の巨人の前任者でありジークに身を捧げた可能性が高いと思われます。
ジークの使命を知る人物であったと思われること。現在ジークが行っている計画の大筋はこの時代からあったと思われること。
既にこの時代には、ライナーたちマーレの戦士とは違う目的意識を持って戦士隊に紛れ込んでいた勢力がいたことになります。
そして獣の巨人を確保し、同じ意思を有する同志に受け継いだ。
それはおそらく、進撃の巨人も同様なのではないでしょうか。
進撃の巨人の所有者だったフクロウことエレン・クルーガーもクサヴァーたちと同様の目的意識を共有し、進撃の巨人を確保し、後継者に譲り渡したのではないでしょうか。
全ては念入りに練られた計画に沿って進められた。
だとすると、ジークはグリシャを裏切ってなど無く、常に同じ陣営にいたということになります。
ジークは全てを知り、グリシャは何も知らされなかった。
グリシャに与えられた使命は、進撃の巨人を有した状態でパラディ島に渡り、子を設けて後継させること。
役割としては、何も知らなくていいからパラディの壁内にその時が来るまで進撃の巨人を潜ませておくことだったのでしょうか。
パラディの壁内にやってきた「その時」なのですが、ライナーたちの襲撃から全てがスタートしています。
これは偶然なのでしょうか。
フクロウやクサヴァーたちには、彼らをまとめるボスがいたと考えるのが自然です。
そのボスがグリシャの人生も操ったと考えられます。
そのボスのマーレ国内での立場が大きいものであったなら、パラディ襲撃も計画の範囲内だったのかもしれません。
現時点での登場済みキャラクターの中にボスがいると仮定するならば、候補者は何人もいません。
計画というものは普通は意思を有する一代で成し遂げるものだと思うのですが、この世界での彼らの計画は、長い歴史と巨人能力者の短い寿命もあってか、何代にも意思を受け継ぎながら達成を目指しているようです。
ですので、ボスも既にこの世を去り、ジークやエレンを草葉の陰から見ているのかもしれません。
何代にも渡って計画を遂行してきたようですが、ジークとエレンが失敗してしまえば意思の共有者はもういないのではないでしょうか。
エルディア人の未来を一身に背負い、失敗が許されない中で誰にも理解されずに陰で暗躍してきた彼らですが、何代にも渡る悲願が達成されるかどうか瀬戸際です。
作戦がいかに効果的に遂行されようとも、最後にはチートなラスボスが控えるのは少年漫画のお約束です。
リヴァイというチートな強敵を前にして、どのようにエルディア人の未来を切り開こうというのでしょうか。
ところでこの物語。立場の違いはあれど単純な善悪などありません。
リヴァイもジークもエレンも悪などではありません。
実に現実主義的な物語で某国人に嫌われるのもよくわかります。
彼らにこそ読んで欲しいんだけどなあ。(笑)