底辺ちゃんねる。

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智辯和歌山 中谷監督に想ふ。

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中谷監督を見るたびに思い出してしまうあの件。

夏真っ盛り、高校野球も盛り上がっています。

注目校が順調に勝ち進む中、予想以上に強そうなのが智辯和歌山です。

例年、強打の強豪扱いを受けますが、攻撃力に比して守備力が弱く、勝っても負けてもお互いに大量点を取り合ういわゆる馬鹿試合となることが多かった印象です。

そのせいもあり、終盤までハラハラする試合内容で高校野球ファンのハートを掴んできました。

守備力が弱い要因の一つとして、甲子園常連の全国区の強豪にしては投手力が弱い。将来プロになるような投手が入ってこないという面もあったかと思います。

その原因は、甲子園が生んだ悲劇のヒーロー高塚信幸投手の影響ではないかと考えられます。

昨今、大船渡高校の佐々木投手の登板回避により、球数制限などの高校野球改革論議が花盛りです。

連投が求められる甲子園大会での最大の犠牲者は誰か? と問われれば、真っ先に思い浮かぶのが1996年の選抜で智辯和歌山のエースだった高塚投手ではないでしょうか。

二年春の甲子園で無双と呼べるピッチング。しかし、準決勝までの快投で肩の寿命は尽きていたのか、決勝では打ち込まれ、直後に行われた国際大会で故障。

それ以降、二度とまともなピッチングが出来るまでに回復することはありませんでした。それでも奇跡の回復を期待する近鉄球団にドラフトで指名されました。

高校野球レベルで投球を出来ない投手が、ドラフトで指名された例は他にあるのでしょうか。それほどの逸材が甲子園の舞台で壊れてしまったのは事実です。

それ以来、素質の高い投手は智辯和歌山を避けるようになった…ということがあったのかもしれません。

そして、その悲劇のヒーローの女房役だったのが現智辯和歌山監督の中谷仁氏です。

しかし、甲子園で采配を振るう中谷監督の顔を見ると、高塚投手以上に残酷で悲劇的な事件を思い出してしまいます。

野球ファン歴の長い人であれば知らぬ者はいないであろう、携帯電話を投げつけられて失明寸前となった事件です。

高塚投手の女房役だった中谷捕手は、高校卒業後にドラフト一位で阪神タイガースに入団。

ちなみにこの年の二位が、その後阪神のエースとなる井川慶投手でした。この井川投手との相性が良かったようで、二軍戦で井川投手が投げる試合では中谷捕手がマスクを被ることが多かったようです。

同期バッテリーでそのまま一軍へ…とはいきませんでした。プロ二年目を迎えた春先、中谷捕手は先輩投手に携帯電話を顔面に投げつけられ、それが眼球を直撃し、視力を失なってしまいました。

その後のリハビリでなんとか日常生活に支障のない視力を取り戻すことが出来たようですが、元通りとまではいかなかったようです。

プロ野球選手となって大事な最初の数年を、満足に野球が出来ない状態で過ごすことになってしまったのは、その後の野球人生に大きな影を落としたであろうことは想像に難くありません。

事件が起きたのは、ちょうど二十年前のことです。現在とは少々価値観が異なるかもしれません。

それでも思う事があります。

何故に阪神タイガースは、事の経緯を詳細に説明しなかったのか。阪神タイガースの対応は、犯罪行為の隠蔽だったのではないか。現在ならば、吉本興業どころではない大問題だったのではないかと思うのです。

携帯電話を人間の顔面に投げつけ、眼球を潰してしまう。事件性を強く感じます。傷害事件となる可能性がとても高いと感じます。

ところが、実際に何があったのかは説明がありません。事件でなく、事故だったというならそう説明すれば良いだけです。

野球ファンは皆同様の思いを未だに抱いていると思います。「阪神タイガースは刑事事件相当の傷害事件を隠ぺいした。」と。

仮に、この事件が二十年後の現在に起きたとして、あの時と同じような対応を阪神球団がとれば大炎上は間違いなく、許されないことでしょう。

個人的には現在のような世知辛い他人に厳しい社会は好きではありません。ネットでブログで好きなことを書いておきながら、ネット社会が嫌いだったりもします。

それでも、現在のようなネット社会にも良いところもあるんだなあと実感してしまいます。

現在であれば、プロ球団内で陰湿ないじめ行為があったとすれば社会がそれを許さないでしょう。

入団間もない若手選手に圧力をかけて口を塞ぐなどという人権侵害も社会から厳しく罰を与えられるでしょう。

そしてそれらの事象を隠ぺいする組織を許さないことでしょう。全てが今話題の吉本興業の件などとはかけ離れたレベルで悪質に感じます。

昔から「アホ」で有名な阪神球団ですから、社会正義に則って過去の事件の真相を説明する…なんてことをするとは思えません。

それでも、少しだけ気持ちが救われる部分もあります。

中谷仁さんはとてもお元気そうです。

智辯和歌山野球はかつての馬鹿試合を再現してくれそうにありません。プロでも知性派で、あの野村克也氏に野球脳が優れていると言われていただけあって、バッテリーを中心とした守備力の強いチームを育て上げてきたようです。

智辯には全国レベルのピッチャーがいない。もう過去の話のようです。二年生の小林投手などは、全盛期の藤川球児投手を思い起こさせるようなスナップの効いたストレートを投げます。

プロの捕手というポジションで、野球脳が高いと評価を受けた人物が高校生を日々指導する。野球少年からすれば素晴らしい経験となるのではないでしょうか。

こんなことを言っては何ですが、甲子園の舞台で高校生を相手に指揮を執っているのも、もしかしたらあの事件のおかげなのかもしれません。

もし、あの事件が無ければ…。 阪神のエース井川投手の女房役は同い年の中谷で、若手を育てる意味でも中谷をレギュラーとして起用する。

それまでの正捕手だった矢野選手は他球団にトレードされる。

そして、正捕手となった中谷捕手も現役引退の時を迎え、知性派かつ人望の厚い生え抜きとして阪神タイガースの監督になるべくラインが敷かれる…。

縦縞のユニフォームを着て甲子園で采配を振るっているのは、矢野監督ではなく、中谷監督だったかもしれない…。

正直、妄想にも程がありますが、全くあり得ない話でもなさそうな気もします。

そんな人が高校野球の甲子園で常連校の監督となって采配を振るう。かつてなかったことです。

歴史にもしはありません。現実はこれで良かったんでしょう。元気な中谷監督が、高島監督時代以上に強いチームを育てて甲子園にやってくる。

それは、楽天時代に田中将大投手とバッテリーを組んで元気な姿を見せてくれた以上に安堵感を与えてくれます。

高校野球改革が叫ばれる昨今、球数の多さから潰れてしまった有望株を間近で見て、そしてプロの世界でパワハラの痛みを知った中谷監督。

もしかすると、これからの時代の高校野球を引っ張っていくに相応しい最適任者なのかもしれません。

そしてあの高塚投手も。

野球のボールを握っていた手で、今はお寿司を握ってらっしゃいます。

関西でも有数の有名な名店を営まれています。

たぶんこれで良かったんですよね。

だけどね…阪神球団よ。あの対応は良くないよ。現在の日本社会では到底許されない。モラルハザード案件ですわ。

そして、誰かは知らんけど、中谷選手に携帯投げつけたやつ。球団に庇ってもらって良しとしてないでしょうね。

今の世は各自がネットを通じて私刑を与える時代だけど、あなたの場合は自分で自分を裁いて反省しないとね。

してます?