履正社の甲子園初優勝に想ふ。
意外!? 大阪の双璧が甲子園初優勝!!
履正社高校甲子園初制覇おめでとうございます。
そして、大阪府民のみなさんおめでとうございます。はい、ありがとうございます。(笑)
てなわけで、履正社高校野球部が春夏通じて全国初制覇。そして、大阪代表としては、二年連続十四回目の夏の選手権制覇となりました。
うん。まあ大阪府民としてめでたい。確かにめでたい。のだけれど、実を言うと星稜を応援したい気持ちもあったんですよね。
別に調子こいてるとかそんなんじゃないんですけど、正直大阪府民は優勝慣れしちゃってるし、それに智辯戦とそれ以降の星稜の戦いぶりに感銘を受けたってのもあったし。
だから複雑ではあったんだけど、どっちが勝ってもいいかなって意味ではちょっと卑怯な気分で見てたかも。(笑)
ただし、履正社高校の関係者と、豊中市民からすると優勝慣れなんかとんでもない話で。今頃はお祭り騒ぎなのかもしれないですよね。うらやまです。
履正社打線VS奥川くん。
試合は履正社打線と奥川くんとの対決となりました。
強打の智辯VS奥川くん…。あれはマスコミの悪い煽りでしたよね。あの試合は一点を争う守備合戦、我慢大会になると私も予想してましたよ。投手力を含めた守備力が自慢の両校の対決でしたからね。
で、奥川くんの最後の相手は春に完璧に蹴散らした履正社打線。智辯と違ったのはガチンコ対決をして完敗をした経験があったことでしょうか。
史上初の?自責点ゼロの優勝投手誕生なるか。それとも履正社打線が攻略するか。
試合開始直後の奥川くんは多少コントロールが甘く、キレも素晴らしいとまではいかないものの、特別調子が悪そうには見えませんでした。
立ち上がりはこんなもんでも、これから調子を上げていければ。そんな感じに見えました。
ところがです。笑顔を絶やさなかった奥川くんの精神が徐々に削られているのが目に見えるように感じられました。
「空振りがとれない。」
投手が序盤を無失点に抑えることは試合を作るうえで重要です。投手の立ち上がりは難しい。だからこそ、例え偶然でも結果的に無失点で抑えられたことを良しとして、気持ちを上げて調子も上げていかないと。
ところが、思うように空振りが取れず、思い切りよく初球から打ってくる履正社打線に気後れしてしまっているのが伝わってくるようでした。
「これは危ないな。」
見ていてそう感じ始めた矢先の連続四球。履正社のスイングに心が圧され始めた事が結果に現れました。
そしてあの一球。
観戦者も、履正社の四番井上君も、全員が来るであろうと予想していたスライダー。
それが、ど真ん中高めに抜け気味に、まるで甲子園の魔物に魅入られたかのようにスッと入ってきました。
待っていた球があそこに来れば、あのような結果にならない方が奇跡だったでしょう。
序盤は良くはないが特別悪くもないと感じた奥川くんの投球内容が、徐々に悪くなっていきます。
制球、スピード、キレ、すべてが智辯戦とは別人。日程はかつてなく投手に有利でした。にもかかわらず、疲労が蓄積しているのか、それとも履正社打線の圧力に気押された影響なのか、今までには見られなかった勢いの無いボールを投じていました。
結果、二桁安打と五失点を喫し、石川県勢として北陸勢としての悲願の初優勝は露と消えてしまいました。
星稜高校準優勝。だけど前評判以上の力を全員野球で証明した。
星稜高校は結果的に準優勝。石川県勢として、北陸勢としての初制覇の夢は叶わず、残念な結果に終わりました。
ですが、前評判以上の実力を大舞台で示してくれたと思います。ともすると、奥川くんのワンマンチームと思われがちだったチームが全員野球で前評判以上の結果を示すことが出来たのではないかと思います。
私も星稜は優勝候補の一角だと思っていました。ですがそれには条件があって、奥川くんを万全の状態で決戦のマウンドに上げることが出来るならばという奥川くん次第という考え方でした。
ですので、智辯戦で延長タイブレークを投げ切った後、「素晴らしい試合を見せてくれた星稜を応援したいけれど、恐らくこれで終わってしまったな。」正直、そう感じてしまいました。多分私だけでなく、多くの野球ファンが同じ思いを持っていたことでしょう。そんな予想を全員野球で大きく裏切ってくれたのは周知の通りです。
全国数千の参加校中二位という素晴らしい成績にふさわしい戦いぶりでしたね。
履正社高校の積極性が好投手攻略に繋がった。それは令和の時代にふさわしいと感じました。
奥川くんVS智辯打線を見た野球ファンの中には、智辯和歌山の無策ぶりを非難する声もありました。具体的に説明すると、球数を投げさせてバントなどで揺さぶりをかけて体力的に潰してしまえ、という前時代的な采配を望む野球ファンが多かったように思います。
ですが、それをやればやったで、「酷暑の甲子園で残酷な戦法を執るんじゃないよ!」という批難を浴びるであろうことも想像がつきます。また、令和の時代の学生スポーツにふさわしくない考え方だと思います。遥か昔、昭和の時代ならそのような勝利至上主義も認められたのでしょうが。
それに対し、履正社は積極的に初球から思い切りよく振っていくという戦法で好投手に圧力をかけ、攻略に成功しました。
奥川くんに対する、智辯の敗北も、履正社の勝利も、これからの時代の高校野球にふさわしいものだったと思います。このような高校にこそ、未来を夢見る若者たちが集うようになってゆくのだろうと期待を込めて思います。
令和の時代の高校野球指導者に私が個人的に望むもの。
それは前時代的な勝利至上主義から来る非情な采配などではなく、学生の未来も考えた指導です。学生スポーツなのですから、勝つための采配に力を入れるよりも、子供の未来を伸ばす指導に力を入れて欲しい。そのような指導者がいる学校にこそ、未来を夢見る若者たちが集まるようになってほしいと思います。
もちろん、戦力で劣る公立校などが自分たちにも出来る弱者の戦法を用いて戦うことを否定はしませんが。
ですが、勝利至上主義が行き過ぎてしまうと、教育上どうなんだろうと考えてしまいます。高校生の健康を守れと球数制限や日程案が論じられる一方で、奥川投手を潰せと戦術論を語る野球ファンもいる。
もしかすると旧態依然とした高校野球を取り巻く環境の中で、最も古い体質を持つのはファンなのかもしれないと感じました。
大阪府民として実は複雑な気持ちも…。
私は残念なことに、今を時めく立花孝志氏と同じく、泉州人です。
昨年二度目の春夏連覇を達成したお馴染み大阪桐蔭高校は大東市にあります。旧国名で言うと河内の北部ですね。
今回優勝した履正社高校は豊中市にありますので、摂津国ということになります。
泉州はというと…。
とりあえず、泉州は大阪南部の西側、海沿いです。
たまに、大阪を南北に分けて代表校が二校出れることがあるんですよね。昨年の第百回記念大会などはまさにそうでした。
そうすると南地区の住民として申し訳ない気持ちになる。北は大阪桐蔭と履正社のどちらかが出れないのに、南部から一校出られて申し訳ないって感じで。
以前はそんなことなかったんですよ。絶対王者PL学園様がおられましたんで。まあ泉州ではなく、南河内ですけど。
PLなき今、大阪の高校野球の南北格差を大きく感じます。特に、泉州地方の学校の奮起を期待したいところですが、今のところは履正社の優勝を笠に着て「野球強い府民様やぞ。」とエバっておきたいと思います。