羽生選手のネット中傷問題に想ふ。
クラウドソーシングとネットライター。
ネットにて、企業や個人が色んな仕事を不特定多数の人に発注できるクラウドソーシングサイトというのがあります。
これによって、幼い子を持ち手が離せなくても、自宅で仕事に従事できるお母さんなどもいます。
色んな業務の募集があるのですが、最も多いのはライターの募集ではないでしょうか。
企業の広告から、芸能人のゴシップまで様々な案件の募集がされています。
「芸能人A氏、愛人、嫁の顔、学歴、以上をテーマにして、絶倫、嫁ブサイク、低IQの単語を本文中に最低3回ずつ使用してください」なんてのが多いです。
答えありきの文章を、会ったこともない、取材したこともない人物について適当に書く訳です。
もちろん、書き手には恨みつらみはありません。ただ仕事として、命ぜられたとおりに書くだけです。
このように書かれたいい加減なものが、スキャンダラスな芸能人の記事としてネット上に溢れるのです。
ところで、先述のテーマと単語はどうやって決められているのか、想像がつきやすいのではないでしょうか。
これ実は、芸能人Aとネットで検索すると、検索予測の上位に上がってくる単語だったりします。
多くの人が検索をしている単語を使って文章を書くことで、検索ヒットされやすくする。いわゆるSEOライティングというやつです。
芸能人A氏 愛人 とか、芸能人A氏 嫁ブサイク とか、多くの人たちが検索して記事を求めている。
多くの人たちが求めている記事を書けば、多くの人たちが訪れてくれて、多くの広告収入が得られるということです。
芸能人の情報を得たくて、検索をしてみたら大して中身のない記事が出てきた経験は皆さんにもあるのではないでしょうか。
そういった記事はこのようにして書かれていたりするのです。
書き手は幼い子をもつ主婦だったりもするのです。もちろん、取材なんてしてはいません。
取材しないといけないのなら書かないでしょう。だって赤ちゃんにミルクをあげるほうが大事に決まってますから。
クラウドワークスにて、羽生選手の中傷記事の募集があったらしい。
クラウドソーシング大手のクラウドワークスにおいて、フィギュアスケートの羽生結弦選手を中傷する記事の募集があったそうです。
羽生結弦、キモすぎというワードでの記事の募集だったようです。
これに対して、フィギュアスケート連盟は対策を講じるとの見解を示し、クラウドワークス社は「 プライバシー権、肖像権、名誉、信用その他他人の権利を侵害し、損害を与える 」ような仕事を禁止しており、 今後も該当した場合は、即座に掲載を中断いたします 」との声明を出したようです。
まずはクラウドワークス社ですが、 「プライバシー権、肖像権、名誉、信用その他他人の権利を侵害し、損害を与えるような仕事を禁じている」のは事実でしょうが、そのような仕事の募集が溢れているのも事実です。
アリバイは作っておきながらも黙認をし、利益はキッチリいただいている...ように見えなくもありません。
また、フィギュアスケート連盟の対応も難しい微妙な問題に思えます。正当な批判、批評と、誹謗中傷の線引きが難しく、対応を間違えば言論、表現の自由を毀損する恐れもあるかと思います。
とはいえ、今回は注意をしておけばよいかと思いますが。
ネット記事と週刊誌。
ネットにおいて、「羽生結弦、キモすぎで誰か記事を書いてください。」と募集するのと、週刊誌の編集長が、「A記者。羽生結弦、キモすぎで記事を書いてくれ。」と命ずるのと何が違うのでしょうか。
やってることは一緒だと思うのです。
むかしから週刊誌は、大衆が求める売れそうな記事を答えありきで書いてきたと思います。
しかしながら、現代のネット記事とは大きな違いがあります。
それは、昔の週刊誌の大衆が求める売れそうな記事とは山勘でしかありませんでしたが、現代のネット記事においては検索上位ワードで大衆の欲求を判断します。
勘ではなく、現実に多くの人がネット上で求めている情報を提供するのです。
中傷記事が出るのが先か、多くの人がそれを求めて検索をするのが先か…。答えはそういうことなんです。
今回は現役のスポーツ選手ということでニュースになりましたが、あらゆる世界の有名人について日常的にこのような記事は書かれています。
このような募集を擁護する気はありませんし、決して正しくはないとは思います。
それでも、このような記事を求めて週刊誌を買ったり、ネットで検索をしたりという需要があるのも事実です。
個人的には悪意のある書き込みや噂話などは反吐が出ます。
それでも、過剰反応は言論、表現の自由を損なう恐れがありますので、取り締まりはほどほどにと願いたいです。