超絶ブラックなコンビニ業界にメスが入っていることに想ふ。
遅きに失した感は否めないが…。
最近、コンビニ業界にメスが入っているニュースをよく目にします。
ブラック企業という言葉が出始めた頃、否、それ以前から日本最悪のブラック企業は実はコンビニだと思っていました。
今頃になってコンビニのブラックぶりに注目集まり、その運営状態にメスが入ることは遅きに失した感は否めませんが、それでもやっとオーナーたちの我慢が報われる日が来たことは素直に喜ぶべきことでしょう。
コンビニオーナーは経営権を持たず、労働者の権利も持たない奴隷のような状態だった。
コンビニ会計という言葉があります。
これは、日々の、月次の、年度の、あらゆる決算をコンビニのコンピューターシステムがやってくれるというものです。
とても便利に思えるのですが、逆に言えばオーナーはやらなくてよいとも、やりたくてもやれないということでもあります。
オーナーはお金だけ出します。しかし、販売価格を決める権利すらありません。
本部の指導とマニュアルに従わなければならず、一切自由に経営する権利など持たない。
資金だけ出して、決算等は本部にまかせ、自分が思うような経営をする権利も持たない。
では、いったい何をするのがコンビニ経営者の仕事なんだ? と不思議に思ってしまいます。
それは、日々の店舗運営をすること。レジを打ち、従業員の採用やシフト管理をし、商品の発注をし、在庫管理や品出しや、清掃等の一切の業務を行う事。
つまりは労働をすることがコンビニオーナーの仕事です。
仕事の内容としては、ファミリーレストラン等の外食産業の店長の業務内容によく似ています。
ところが、ブラックで名高い外食産業の店長とは決定的な違いがあります。
それは、経営に必要な資金を出していること。経営状態によっては収入も休みも得られないこと。破綻時には借金を背負うリスクがあること。
そして、形だけでも経営者であるので、労働者としての権利が一切ないこと。
経営者と労働者の悪い面だけを持ち、両方の権利を持たないのがコンビニオーナーなのです。
大量廃棄にもやっとメスが入った。
コンビニは長年に渡って、食品の大量廃棄をしてきました。
世間では、報道等をみても、勘違いが多かったように思います。
「コンビニだって商売でやってるんだから無駄を省く努力はしている。廃棄を減らそうとしている。」との誤解を見聞きすることがありました。
大いなる誤解です。例えばです。
イトーヨーカドーの食品売り場で大量の食品が廃棄されれば、ヨーカドーの経営を圧迫します。ですから、廃棄はほどほどにと考えるのが自然なことです。
ところがです。コンビニの廃棄というのは、言い換えればオーナーのお金を捨てているのです。
セブンイレブンの廃棄は、セブンイレブンの経営を圧迫しません。なぜなら、商品の仕入れ代金を出しているのがオーナーだからです。
コンビニは機会ロスを恐れます。
「悪魔のおにぎりを買いに来たお客さんがいたが、売り切れていたために諦めて帰ってしまった。」このような事例を機会ロスと呼びます。
これを恐れるがために、大量仕入れと大量廃棄を良しとしてきたのです。
その結果、コンビニオーナーに日々、お金を捨てさせてきました。
大量廃棄は食品のロスであると同時に資金のロスでもあります。
ところが資金を失うのはオーナーであり、大量廃棄は売り上げアップに繋がります。
コンビニ本部は廃棄には関わりませんが、売上金に対してはロイヤリティを発生させるわけですから、実にコンビニ本部にだけ都合の良いシステムです。
当然のことながらオーナーとしては、自分のお金をあまり捨てたくないという心情になります。
ですが、契約書に本部の指導に従わない場合は、解約の上で解約金を支払うとあります。
「本部はこれだけ廃棄をしろと指導したのに従わなかった。解約金2000万支払いの上でやめて下さい。」
実際にあることです。そして新しい人が加盟金を払ってその店舗の新オーナーとなるわけですからおいしい商売です。
また、この解約と解約金を恐れるからこそ、コンビニオーナーたちは声を上げることが出来ずに日本最悪のブラック労働者の地位に甘んじてきたわけです。
世間に知られるブラック企業のブラック労働は数あれど、労働を搾取されるだけでなく、財産まで搾取される。
そして家族のかたちにまで影響を与え、家庭の崩壊を招くことも多々ある。自殺と離婚も多いとされてきた職業。
コンビニこそ日本最大のブラック企業であると私が考えてきた所以です。
ファミリーマート土下座強要事件動画にコンビニ本部の意識がしっかりと映っていた。
数年前に話題になったファミリーマートの土下座強要事件。
記憶に新しいという人も多いのではないでしょうか。
動画サイトに一部始終がアップされて話題となりましたが、この動画の本当の見るべきところは注目を浴びた部分とは別にあったと考えています。
正直に言いますと、動画に出てくるような輩はコンビニに限らず、お客様と接する仕事をしていると残念ながら頻繁に出会うことが出来ます。
この動画の本当に異常な点は、土下座をさせたのがコンビニ本部員だということです。
あのような客はいくらでもいます。毅然と対応をしたうえで、最悪の場合は警察を呼べばいいのです。
ところが判断を間違って、コンビニ本部員を呼んでしまった。
それまでは横暴な客に立ち向かっていたオーナー親子も本部員には抵抗できずに土下座させられました。
横暴な客に土下座させられるようなことは、例えばファミリーレストランでは起こりません。毅然とした対応を取れば良いのです。
ところがコンビニだからこそ、本部と店舗の圧倒的主従関係があるからこそ土下座をさせられたのです。
オーナー親子に土下座をさせたのは、横暴な客ではなく本部員だったのです。
指導に従わなければ解約金を払った上での解約という圧倒的に弱い立場が屈辱の土下座をさせたのです。
決して輩たちだけでは土下座をさせることはできなかったでしょう。
また、コンビニ本部と加盟店の異様な関係もしっかりと映っていました。
オーナー親子が土下座をする後ろで、本部員は椅子に座っているのです。
ファミリーマートの一店舗で、お客様に対して土下座をするのであれば、ファミリーマートの看板を背負った本部員も一緒になって土下座をするのが当然のことであるはずです。
「店舗で起こったことは店舗の責任であって本部はなんら責任を負わない。」という日本社会の常識からはかけ離れた意識がしっかりと映りこんでいます。
そして、横暴な輩たちも馬鹿故に思い違いをしています。本来、店に土下座をさせるなら本部員にもさせるべきでした。
ところが、彼らの言い分を本部員が汲んでくれるので味方だと錯覚したわけです。
では何故、本部員はオーナー親子に土下座をさせたのでしょう。
想像に過ぎませんが、恐らくは面倒くさかったから。こんな時間に呼びつけやがって、とっとと済ませようという気持ちがあったから。
その結果、自分は本部員であって本部員というのはお客様に対して何ら責任を負わない、店舗のオーナーとも共に歩まない、横柄な客に対して盾となって店舗を守るようなことはしない、むしろ横柄な客の言い分を飲んで土下座をさせたうえに商品まで渡して終わらせるという異常性を動画サイトを通じて世間に披露してしまったのです。
しかしながら、当時のマスコミ報道においてもその点に着眼されることはなく、個人的には大変残念な思いをしました。
コンビニの最も恐ろしい所は、システムではなく運用する人間にある。
指導に従わなければ解約する。解約金も取る。
指導の解釈は本部の都合で拡大もする。
システムを恐れるあまりに、不満があっても声を上げることも出来ず、時には横暴な客に土下座までさせられる。
しかし、最も恐ろしいのはシステムではなく、それを運用する人間にあります。
人間である本部員にも、店の立場から見ると当たりはずれというものがあります。
当たりならば良いのですが、ハズレを引くと時として恐ろしいことになります。
コンビニ本部と店舗の関係性というのは、ただでさえ一方的な主従関係です。
本部員の性格によっては、その一方的な主従関係に酔っているのではないかと思うような場合もあります。
わかりやすく言えば、生来ドSと呼ばれるような人がコンビニの本部員として活動すると…というようなことです。
一方的な主従関係に快楽でも感じているのではないかと思われる場合もあります。
ファミマの土下座事件の本部員もそのような人物だったのかもしれません。
また、コンビニといえば、オーナーの離婚と自殺が多いと言われてきました。
自殺については本部にも直接的な責任がある場合もあるかもしれません。
それは「潰し屋」が存在するのではないかと考えられることです。
潰し屋とは、私が個人的にそう呼んでいるだけなのですが、コンビニ本部にとって都合の良くない店舗、契約を解除したい店舗等でオーナーを潰す役割を担う人物のことです。
そういう人物がいるのではないかと考えています。
契約更新が近い時期に、本部からみて契約を更新したくない店に潰し屋の本部員を充てる。
潰し屋は契約更新のモチベーションをオーナーから失わせるために嫌がらせをする。
簡単に言えばイジメる。
そうすることでオーナーの方から契約の解除を言い出させる。
その結果が時として、精神疾患や自殺を招いてしまうケースもあるのではないかと考えています。
それが全社レベルで行われているか、1地区レベルで行われているかはわかりませんが。
最後に。
コンビニというのは皆さんの想像以上に本当にブラックです。
「廃棄を1年間毎月100万円してください。この条件を飲むと契約書にサインしてください。サインが出来ない、サインしたのに約束を守れない場合は2000万円支払いの上で解約とします。これは指導です。指導に従わない場合は契約書に明示されていますから。」
こんな異常なことが実際に行われていました。
最低給与保証、そんなのないです。給与ではなく借金です。最低保証でもらった金額は後に返さないといけません。
冠婚葬祭や旅行など、休みが欲しい時は人員を派遣します。なんて言います。
これ、1か月前くらいから予約を入れないといけませんので、冠婚葬祭の葬では役に立ちません。
また、派遣にかかる人件費がハンパないです。経営に苦労する店舗オーナーには現実的な金額ではありません。
そんなに払うんなら自分が働いて貰いたいと思える金額です。
オーナー夫婦が旅行で3日間店を空けるとして、代わりの人員を派遣してもらったとします。
だいたい15万から20万覚悟です。
オーナー夫婦が2人で1か月働いても、そんなにない場合もあります。そのようなオーナーには到底払えない金額です。
ブラックと言われる外食産業で、退職時に会社に多額の借金ができる…なんてことはないでしょう。
コンビニの場合、多額の借金を抱えたうえで、解約金数千万を取られるなんてことが行われてきました。
しかも、実質労働者でありながら労働者の権利をもたない故に、365日年中無休でロクに睡眠もとらずに働いて、借金だけが増えていくなんてことがありえるのです。
借金が増えるだけなのでやめさせてくださいなどと言うと、多額の解約金を求められたのです。やめる権利すらないに等しかったのです。
夫婦でコンビニを始める際には、「夫婦のどちらかは必ず店にいてください。」なんて言われます。
それを家庭の目線で見ると、家に夫婦が二人でいることはできないという意味です。
コンビニ経営者に離婚が多いのも納得です。夫婦のどちらかが店に出ている状態なんて、家庭を崩壊させて下さいと言ってるようなもんです。しかも24時間経営なのですから。
また、経営状態に余裕のない店舗のオーナーにとって、休息とはお金を失うことです。
休日が欲しければ、自分の労働時間を減らしたければ、その分誰かに代わりに業務にあたってもらわなければなりません。
その人件費が払えないからこそ、多くのオーナーは人件費の高い深夜に働き、長時間労働で年中無休という悪循環にハマる人も少なくないのです。
コンビニ経営とは、時としてオーナー自身が1か月にどれだけシフトを埋められるか=月収だったりするのです。
コンビニ店舗の売り上げにおける最も重要なファクターは立地です。
これを本部は認めません。「店舗の売り上げを決めるのは、接客と品揃えと清掃の3要素だ。これが出来ていないから経営状態が悪いんだ」と全本部員は堂々と言います。
しかし、これをお読みの方もお気づきでしょう。
コンビニの売り上げに最も寄与するのは先述の通り立地です。
コンビニ本部の開発担当者が立地を選定し、そうした店舗にオーナーをあてがった責任については認めません。
そして、立地が悪いからこそ売り上げが上がらず、経費をさけずにオーナーがシフトを埋めるのに精いっぱいで年中無休の長時間労働となって疲弊をしていき、接客も品揃えも清掃にも影響が出てくる悪循環に陥ります。
このような場合でも悪いのはオーナーだけなのです。
こんな具合なので、遅きに失したとはいえ、国がコンビニの体質改善にメスを入れてくれるのは素晴らしいことです。
コンビニの裏側がいかにブラックであろうとも、いまや小売り商店の域を超えた社会インフラに成長しているのは事実です。
無くては困るコンビニ。せめてオーナーさんたちの労働条件が改善されることを期待します。
しかし…コンビニは極端な例ではありますが、労働と暮らしのかたちは、日本社会全体が抱える問題のような気がします。
日本が本当の先進国となるためには、解決していかねばならない問題が山積みされているように思えてなりません。